ここ数年、AI関連株といえばNVIDIAでした。
ChatGPTが出てきて、生成AIが広がり、GPUが必要になり、NVIDIAの売上が伸びる。
非常に分かりやすい話です。
ただ、最近AI関連の会社を調べていると、少し気になることがありました。
AIを動かすためにはGPUが必要です。
GPUを大量に置くためにはデータセンターが必要です。
そして当然ですが、データセンターを動かすためには、電気が必要になります。
当たり前といえば当たり前なのですが、AIが大量の電気を使うようになると、
「そもそも、その電気はどこから来るのでしょう」
という話になります。
調べていくと、どうやらこの部分が今後数年間、かなり大きな産業テーマになりそうです。
AIが使う電気は、想像以上に増えている
IEA(国際エネルギー機関)の予測では、世界のデータセンターの電力消費量は2030年に約945TWhまで増えるとされています。
2024年から2030年まで、ほぼ2倍です。
しかもデータセンターの電力需要は年率約15%で増え、その他の電力需要全体より4倍以上速く成長する予測です。
これは現在の日本一国の年間電力消費量を少し上回る程度です。つまり2030年には、
「世界中のデータセンターだけで、日本一国分くらいの電気を使う」
ことになります。
なかなかの量です。
そして、その増加を牽引しているのがAIです。
AI処理に使われるAccelerated Serverの電力消費は、IEAの基本シナリオで年率約30%増加すると予測されています。
GPUだけあってもAIは動かない
普段AIを使っていると、最後のChatGPTやGPUあたりしか目に入りません。
しかし実際には、そのずっと後ろ側に巨大な物理インフラがあります。
発電所で電気を作り、それを高圧の送電線で運び、変電所で電圧を変え、データセンターまで届けなければいけません。
この発電所から利用者まで電気を届けるネットワークを、一般に「Grid(電力網)」と呼びます。

問題は「発電量が足りない」だけではない
当初、自分もAIによる電力不足という言葉を聞いて、
「原子力発電所でもたくさん作るのかな」
くらいに考えていました。
しかし実際には、もう少し複雑です。
発電能力があったとしても、
・送電線が足りない
・変電所の容量が足りない
・大型変圧器がない
・データセンターをGridへ接続できない
ということが起こります。
AIの世界では、新しいモデルは数か月で作れます。
データセンターも2〜3年程度で建設できます。
一方で、電力インフラの増設にはそれより長い時間がかかります。
ソフトウェアはコピーできますが、送電線はコピー&ペーストできません。
当たり前の話ですが、AIが急速に成長している今、この当たり前がボトルネックになっています。
では、何が必要になるのか
電力需要が増えれば、当然それを支える設備への投資も増えます。
大きく分けると、
1. 発電設備
天然ガス、原子力、再生可能エネルギー、蓄電設備などです。
IEAは、増加するデータセンター需要を支える電源として再生可能エネルギーだけではなく、天然ガスや原子力も重要になると見ています
2. 変圧器・変電設備
作った電気の電圧を変換する設備です。
巨大なデータセンターを新しくGridにつなぐためにも必要になります。
3. Switchgear
日本語では開閉装置などと呼ばれます。
ものすごく単純化すると「巨大なブレーカーと配電盤」のようなものです。
データセンター内部でも大量に必要になります。
4. 高圧送電ケーブル
作った電気を必要な地域まで運びます。
再生可能エネルギーの場合、発電地点と需要地点が遠く離れることもあり、送電インフラの重要性はさらに高くなります。
5. Gridそのものを建設する会社
設備があっても、それをつなぐ人がいなければ電力網は完成しません。
送電線、変電所、Grid接続を実際に施工する会社も必要になります。
どんな企業がいるのか
調べてみると、面白い会社がいくつもあります。
たとえば米国では、
・GE Vernova
・Eaton
・Quanta Services
など。
欧州では、
・Siemens Energy
・Schneider Electric
・NKT
・Nexans
などがあります。
GE VernovaやSiemens Energyは発電設備からGridまで。
EatonやSchneiderはデータセンター内部の電力設備。
NKTやNexansは高圧送電ケーブル。
同じ「AI電力需要」というテーマでも、利益を取る場所がそれぞれ違います。
個人的に面白かったのがNKTとNexansでした。
どちらもNVIDIAのような華やかなAI企業ではありません。
やっていることは、基本的には電線です。
しかしAIデータセンターがどれだけ増えても、そこへ電気を運べなければ何も始まりません。
AIが最先端の技術を作りながら、その裏側では100年以上前から存在する「電線」が重要になる。
なんとも不思議なものです。
AI投資は「AI企業」だけを見るものではないのかもしれない
2023年頃は、
AI
↓
GPU
↓
NVIDIA
を見るだけでも十分だったのかもしれません。
しかし市場が大きくなるにつれて、
AI
↓
GPU
↓
データセンター
↓
冷却
↓
電力設備
↓
Grid
↓
発電
と、需要が少しずつ上流へ伝わっています。
ゴールドラッシュでは金を掘る人より、つるはしを売った人が儲かった、という有名な話があります。
AIでも似たことが起きるのでしょうか。
もちろん、NKTやSiemens Energyが次のNVIDIAになる、と言いたいわけではありません。
電力設備は半導体ほど利益率が高くなく、工場も人も資材も必要です。
ただ、
「AIが成長する」
という同じ前提から、
「ではGPUの次に何が足りなくなるのか」
と考えていくと、景色はかなり変わって見えます。
目の前にあるAIサービスも、辿っていけば発電所と一本の電線につながっています。
新しい産業も、結局は昔からある社会の仕組みの上に出来上がっている。
先人が作ってきた電力網の先端で、いまAIが動いていると思うと、Gridという地味な設備も少し違って見えてくるものでした。
これらの株について面白いのが、NKTなどは欧州の個別株となるため、楽天証券やSBI証券では直接購入できません。そのため、あまり多くの人がまだ購入していない可能性もあります。
「実際どこの証券会社なら買えるのか」
については、自分のブログで調べてみたのでもし良かったらこちらも読んでいただけると嬉しいです。